朝、鏡を見るのが憂鬱でしかたない。
髪の毛がボサボサだからだ。
クシでとかせばいいんじゃない?と言われそうだが、
わたしの髪はそんな簡単に整えられるような代物ではない。
毎朝、いったいどこから手をつければよいんだろう…と
鏡の前で数秒考えてしまう。
ため息をつきながら、髪をひと房手に取ると、触った感触がもうゴワゴワしている。
もともとくせっ毛なので、髪がうねっているのは仕方ないのだが、それに加えて髪の痛みからあっちこっちへと
毛先が伸びていて、見た感じ、雑草の生えた空き地のようだ。
どうしてこうなってしまったんだろう……
絡んだ髪の毛先を、少しずつブラシでほぐしながら、思い出す。
数年前までは、天使の輪と呼ばれる光沢が出るほど、美しい髪を保っていた。
くせっ毛は縮毛矯正でまっすぐにし、美容師の勧めで、定期的なトリートメントも欠かさなかった。
髪の毛をゴムで束ねようとしても、髪の表面に艶があるものだからすぐに取れてしまうくらいツヤツヤの髪だったのになぁ…
そんなことをいっていても始まらない。
安い乳液で、髪をしっとりさせながら、わたしの今のパサついた髪をクシでとかしてゆく。
そう、全ては妊娠と出産がきっかけだ。
妊娠初期になると、もうツワリがひどくて、シャンプーとコンデショナーの匂いがダメになってしまった。
トリートメントなんて、そんなものすらしている余裕はない。
仕方ないので、シャンプーは極力少なめで髪を洗い、そのままお湯で流したあとは乾かすのみとなってしまった。
ツワリがしばらくするとおさまったが、今度はお腹が大きくなってきて、髪を洗うのに下を向くのがキツくなってくる。
子供が産まれてからは、いったいいつ風呂に入ったのかわからないくらい忙しくて、眠くて、髪の手入れなんてしている余裕があったら1秒でも寝ていたかった。
そう、子育てが一段落したときにはもう、わたしの髪の毛はガサガサのボサボサになっていたのである。
この痛んだ髪をクシでとかしたところで、気休めにしかならない。
わたしはクシでからんだ髪だけとくと、残りは手ぐしでささっと整えて、あとは後ろに束ねてゴムでひとつ結び。
もう、妊娠、出産してからこの髪型しかしてない、というかボサボサすぎて出来ない。
ああ、もう今からトリートメントしても遅いだろうか。
そんな暇とお金があればなぁ、とときどに髪を手で触りながら考えてしまうのだった。